2. 遠赤外線加熱と熱風加熱・接触加熱の比較

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(1)熱風加熱・接触(伝導)加熱

熱源により加熱された空気や熱源そのものを被加熱物に接触させる加熱方式であり、両者とも伝熱方式は同一である。
熱風の温度と非加熱物の表面温度の差で熱流が起きるが、比較的短時間で表面は同温度になり、表面から内部への伝導分しか熱吸収は起きない。
そのため物体表面の温度は上がるが内部まで温度が上がるのにはかなりの時間がかかる。
物体を100℃に加熱する場合、接触する熱源は100℃でなければならない。
この場合、物体の表面で受ける熱量は一定ではなく時間と共に減少する。
すなわち熱風温度をT、物体表面温度をT、物体表面で受ける熱量をQとすると下式になるので

=h(T-Th:熱伝達係数、T:絶対温度

物体表面温度が上がるに従い、受熱量は減り内部への熱伝達量は徐々に減少することになり、内部が100℃になるには時間が掛かる事になる。

物体の受熱量と表面温度の模式図

受熱量 Q(kcal/m2・h)物体温度 T(℃)

物体の受熱量と表面温度の模式図

 

短時間で内部を100℃まで加熱しようとすれば熱風温度を上げなければならない。
そうすると内部の温度が上がる前に物体表面は100℃を超える事となり表面が劣化したり損傷を起こす。
食品等では表面が焦げる事となる。箱型乾燥機などで時間を掛けて乾燥できるものに向いている。例えば夕方乾燥機に投入して翌朝取り出す作業等。
しかも100℃設定だと物体の温度はそれ以上上がらないので安全であるという利点がある。

(2)遠赤外加熱の伝熱

ヒーター温度をT、 物体表面温度をT、 物体表面で受ける熱量をQi とすると
ステファン・ボルツマンの法則で下式になる。
ヒーター温度の4乗と表面温度の4乗の差に比例した熱流となる。

i=ρ(TH-TSρ:定数、 T:絶対温度

被加熱物が目的温度に達した加熱終了時においても、ヒーター温度ははるかに高くQiはほぼ一定である。加熱初めから終了時まで熱流はほとんど変わらない。
したがって表面で受けた熱流は内部への供給エネルギーとなり、他の加熱方式と比較して短時間で内部まで表面と同温度まで昇温させることができる。

物体の受熱量と表面温度の模式図

受熱量 Qi (kcal/m2・h)物体温度 T (℃)

物体の受熱量と表面温度の模式図